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■□■□■ つーさんの山の温泉シリーズ □■□■□ ﾒｲｹﾝ ｶﾈﾂﾘ 第６２話 名剣温泉と鐘釣温泉 第６２話は、祖母谷温泉から先を紹介しよう。祖母谷温泉から歩 いて、名剣温泉（ﾒｲｹﾝ）に寄り、その後欅平（ｹﾔｷﾀﾞｲﾗ）からトロッ コ電車に乗り、途中下車して鐘釣温泉（ｶﾈﾂﾘ）に寄った。 【案 内 図】 【祖母谷温泉にて】 ２９日の夕方、雨が降り始めた。夕立というより寒冷前線の影響 による雨のようで、降ったり止んだりだった。 翌３０日の朝も早く起きたが、昨日まで久々に長い距離を歩いた せいか、足が痛くまともに歩けない。特に、階段の下りは悲惨だ。 天気は相変わらず、ときどき激しく降るがすぐ止んで小康状態にな る。朝食前に外の露天風呂にはいる。 朝食は７時から。段々下界の生活に近付いてきた。メニューはプ レーンオムレツ、納豆、あさりの味噌汁、海苔、漬物など。あさり の味噌汁が旨かった。 同部屋の連中もあれこれ考えていたようだが、結局まっすぐ帰る ことにしたようだ。地獄の湯にもう一度寄ったけど、入らず戻る。 なぜか、出がけのせわしない湯というのは気が進まない。 【祖母谷温泉から名剣温泉へ】 欅平の駅から名剣温泉の建物が見える。少し登りだが１０分もか からないだろう。名剣温泉から祖母谷温泉は、ちょっと歩くという 感じで登りで４０分ほどかかるようだ。祖母谷温泉から名剣温泉は 下りだが、体の具合いが悪くなったわれわれには、ちときつい。ぶ らぶら３０分くらい歩いた。 長い祖母谷隧道をくぐったりしながら、右手に沢を見て歩く。沢 の名前がわからないんだが、祖母谷と祖父谷（じじだに）が合流し てどうなるんだろう？名剣温泉があるから名剣沢という気もするの だが・・。 深い谷を見ていると、なにやら温泉の湯を引いているようなチュ ーブが一本伸びていた。「どうやって、あんな高い険しいところに」 という場所に架かっている。歩きながら追いかけると確かに名剣温 泉に入っていた。湯か水かそれが問題だ。なんて。 ところで、宇奈月から欅平まではもちろん車道がない。それじゃ、 工事現場の車はどうするか。これはトロッコで運ぶ。だから、欅平 とその先には工事用の車は走っている。頻繁には走らないのでうる さくはない。祖母谷隧道以外のトンネルでは、歩行者には専用の遊 歩道がある。 【名剣温泉】 さて名剣温泉である。ここは黒部峡谷の観光地の最前線だ。僕ら は８時半頃に名剣温泉に着いたのだが、妻が「温泉はもういいわ」 てなことをいうもので(^_^)、入るにあたりちょっと躊躇してしま った。入浴料は一人５００円。ここに泊まった客は、どんどん今日 の目的地を目指して出て行く。といっても日本海に戻るしかないん だけど。もちろんというか、祖母谷温泉に向かう人は・・・いない。 意を決して下を目指して階段を降りる。というのも足が痛くて階 段が降りられないﾄﾎﾎ・・。やっと降りると男用の露天風呂。女性 用はその先にあった。客は誰もいない。風呂は祖母谷温泉の方を向 いている。険峻だけが目にはいるのだ。多分女湯は名剣沢の怒涛の ような流れに向いているんだろう。 名剣温泉は崖っぷちにたっているんだが、真下の名剣沢はこの付 近でもっとも狭い険峻となって両側が切り立っており、波のぶつか る轟音がすごい。轟音を聞きながら谷間を眺めていると、「あぁ、 ビールが飲みたい」と思うが、朝からはねー。どうも。無色透明、 単純泉。祖母谷温泉の引き湯ではないかと疑う次第だ。 適当に上がり、宿の主人と会話。白馬から祖母谷温泉への下りの 話。名剣温泉は入れば入るほど疲れが取れるという。主人は（ご老 体）、山菜をさばきながら話す。今度は山菜が食べたくなった。 名剣温泉の脇には休憩所が設けられており、食事もできる様にな っているし、みやげ物も売っている。完全な観光地なのである。話 をしている間にも早速一番電車の客が押し掛けてきた。本当にドッ ト押し寄せて来る。 【名剣温泉から鐘釣温泉へ】 また降り始めた雨が収まるのを待って欅平へ向かう。いうまでも ないが欅平は黒部峡谷鉄道の終点だ。この先は、水平道を通って阿 曽原へ行くか、関電専用の地下鉄道で黒部第四ダムに行くしかない。 この辺については以前のシリーズで書いたことがある。 名剣温泉から欅平に向かって歩くと、時間的に名剣温泉から欅平 に向かうより圧倒的に欅平から名剣温泉に向かう人の方が多い。記 念写真を撮りながら歩いている。中には、２０ｍ毎に写真を撮りっ こしている中年カップルがいて、あれはどう見ても浮気旅行だ(^_^) ２０分毎に電車が着くたびに客がドット吐き出され、雲霞のごとく これまた名剣温泉に向かう。 窓口で鐘釣までの切符を買う。荷物券も買わされてしまった。１ ５ｋｇ以上の場合には買わされるようだ。トロッコ電車の車両には ３種類あるようで、普通、デラックス、展望車となっている。普通 だとお猿の電車のようにただ屋根があるだけ。デラックス、展望車 は通常の電車のように側面にも覆いがある。 この鉄道はもちろん関電の保守用に作られたもので、宇奈月から 欅平まで１時間程度かかる。欅平から黒薙の辺りまでは、一体どう やって橋を架けたのかと疑問に思うぐらいの険峻を通っている。１ 時間かかるといってもゆっくり走るので時間がかかるわけで、長さ は２０ｋｍ程度のようだ。 僕らは通常の観光客と逆に行動しているのでなんなく乗れるのだ が、通常コースをとる場合には、予約をしておかないとかなり時間 待ちをさせられるようだ。で、僕らはすぐ乗ることができた。僕は トロッコ電車で帰るのは初めてだ。阿曽原に行くときに使ったこと しかなかった。 【鐘釣温泉まで】 ３０分も乗ったら鐘釣温泉に着いた。電車が駅にはいると目の前 に鐘釣温泉美好荘がある。「アルバイト求む」と貼紙がしてあって 「休業中」とあった。薄汚れてさびれていた。 改札で「今日帰りますか？」と聞かれたので帰るというと、「帰 りの予約をして下さい」という。それ程混むわけね。で、時刻表を 見ると黒薙に泊まる電車は、すでに満員が多い。納得。黒薙に泊ま らない電車もある。１０時だったので１２時３０分の電車を予約し た。 今来た方向に向かって線路沿いを歩くと、といっても道はこれし かないんだが、５分ほどでかなりくたびれた木造２階建ての鐘釣温 泉についた。 【鐘釣温泉】 駄菓子屋の店先に似た受付に中年の細面の女性が座っており、「 入浴料はいくらですか？」ときくと「いりません」という。バスタ オルを貸すようなので妻用に４００円なりで借りた。それにしても 無愛想な女だった。先に向かって歩くと右手に祠があり、なにか裏 庭を通り抜ける感じである。急な石段を２０〜３０ｍ下った所が河 原だった。 すぐ脇にテントで囲ったところがあり、女性の脱衣所らしい。右 手の先に屋根だけのテントがありこれは男の脱衣所だろう。女性の 脱衣所の前がガイドブックに書かれている洞窟風呂らしいが、男が 入っていて女性は入れないと妻がいう。水着を持って行かなかった んですね。恨まれてしまった(^_^) 河原に沿って天然の岩風呂が点在しており、好きな所に入ればよ い。温泉の水位と川の水位は同じで、関電の監視員が放流時に水位 を監視している。僕も早速、裸になって風呂に入った。女性は全員 水着。男は海パンもいれば裸もいる。ちょっと温めの湯で、温かい 時期しか入れないが、全く自然の岩風呂につかり手足を伸ばしてい ると極楽極楽だ。 と思い始めたとき、上が騒がしくなり、ドヤドヤと観光客の一団 「闖入」してきた。「来た」なんてものじゃなくて、まさしく「闖 入」だ。３０人ほど来るや否や、入浴者に何の断わりもなく突然カ メラとビデオで撮り始め、あげくに座り込んで弁当を食べ始めた。 なんだ、なんだ、これは。裸になって風呂にはいる人などいない。 すっかり、見せ物になってしまった。今回の山行で最も憤激した一 件だ。 上流で放流しているということで、段々川の水位があがり、風呂 に流れ込んでくるという。面白そうだというので、しばらく水位が あがるのを楽しんでいたが、途中で諦めた。 気を取りなおして風呂から出て、受付に戻った。大広間にあがり 休憩することにした。大広間には団体が入っていたが、どういうわ けかネクタイを締めた年輩者がいる。窓の下は、断崖絶壁のようだ った。ビールを飲みながら、１１時半と昼食時なので、何か作って もらうことにした。 奥の厨房に顔を出して「何かできます？」というと、さっきは受 付にいた無愛想オバサンが無愛想に「山菜定食なら」というので、 無愛想にお願いした。待つ間もなくすぐ出てきた。わらびの味噌汁 こごみのあえ物、など５品程。全品山菜だった。食器はすべてプラ スチックで飾り気なし。ヘルシーでなかなかのものだと、僕は感じ た。「意外に高いんじゃない、１８００円！」と妻。「いやいや、 食器を見ろよ、１２００円！」と僕。答えは中間でありました。 【黒薙温泉へ】 さて帰ろうかと、勘定を払う段になると、先ほどの無愛想さんが 出てきた。ところが今度は、山の話から祖母谷温泉の話まで随分話 しかけて愛想がいい。どうなってんの？随分、祖母谷温泉を意識し ているようで、「昔は山小屋そのもので、食事はひどかった」なん ていう。「いやいや、まずまずでしたよ。」と僕は答えたのだが、 あとで妻に「あれで、まずまずなの？」と責められてしまった(^_^) 鐘釣駅で電車を待っていると満員の電車が通過して行った。ここ でポイントの切り替えがあって、ちょっと止まるんですね。客を見 ていると、祖母谷温泉で一緒だった（露天風呂）家族連れの男の子 が僕を見て手を振ったので、僕も手を振ったら、今度はオヤジも手 を振ってきた。 祖母谷温泉で河原の露天風呂に入っていると、あのオヤジと息子 がビデオを持って来て、写し始めたんですね。気分悪いぞ、と思い 始めたらオヤジはタオルもないのに裸になって息子と入ってきたん ですね。上にいた奥さんと娘にタオルを取りに走らせたりしてね。 そんなわけで、風呂で一緒に遊んだ仲なのだ。 宇奈月から欅平に向かう電車が入って来た。と、バラバラと降り てとたんに記念写真を取り始めた。こういう風景を見ていると、「 日本人はどこでも記念写真を取りたがる」というのは本当だな、と 思う。 予約した電車がきたので乗って黒薙に向かった。３駅ほどでトン ネルを過ぎて鉄橋を過ぎると本当に谷間の小さな駅があった。黒薙 である。降りたのは、僕ら二人だけ。背後から「エーッ、こんなと ころに何かあるの？」と声が聞こえた。「黒薙温泉という秘湯があ るんですよ」と教えてあげた。後ろにトンネルと鉄橋、左手は険峻 、前方はトンネルだ。黒薙温泉へはトンネルを歩いて入るのだ。こ こが今回の最終目的地だ。 NBH01357 つーさん |
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