こんな本を読みました

掲載一覧表（２０１５年０４月〜０６月分）
掲載日時タイトル
2015/06/21スペイン無敵艦隊の悲劇
2015/06/07蝦夷地別件（下）
2015/05/31蝦夷地別件（中）
2015/05/24アルマダの戦い
2015/04/19蝦夷地別件（上）
2015/04/11静かなる大地


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スペイン無敵艦隊の悲劇
岩根圀和
彩流社

　「スペイン無敵艦隊の悲劇」、副題が−イングランド遠征の果て に−だ。この本は2015年の3月30日に発行された新しい本だが、この 本の前にマイケル・ルイス著「アルマダの戦い−新評論社−」を読 んだ。こちらが、いわば岩根圀和さんの本の原著にでも当たる本だ ろうと思う。マイケル・ルイスの本は、歴史的な細かな事項、単位 等で日本人には非常にわかりにくかった。しかし、「スペイン無敵 艦隊の悲劇」は日本人が著者にも関わらず、スペイン語の原典にあ たり、可能な限り、わかりやすく書いている。したがって、「アル マダの戦い」よりずっとわかりやすい。この本は、スペイン無敵艦 隊の元帥であった、メディナ・シドニア公の視点で書かれたものと いうことができる。スペインの無敵艦隊とは無敵だったのではなく て、初めて戦った海戦でイングランドに負けたのではなく、遠洋航 海に負けたのだとわかった。

蝦夷地別件（下）
船戸与一
新潮文庫

　この小説は再読だ。池澤夏樹の傑作にして最大の代表作だと思う。 すぐに読了できる、再読のこの小説を読むのに時間がかかったのは 多忙だったことが大きいのだが、実は内容を味わって読んだためだ ろうと思う。

蝦夷地別件（中）
船戸与一
新潮文庫

　この小説は再読だ。池澤夏樹の傑作にして最大の代表作だと思う。 すぐに読了できる、再読のこの小説を読むのに時間がかかったのは 多忙だったことが大きいのだが、実は内容を味わって読んだためだ ろうと思う。

アルマダの戦い
マイケル・ルイス
新評論

　西洋史で「無敵艦隊の敗戦」というのを習うだろうと思う。この 敗戦は、これまで勝ち続けてきた無敵艦隊がイングランドの艦隊に 海戦を挑んで敗れ、そして無敵のスペインに代わって世界の覇者と なる時代を告げるものとなんとなく理解してきた。

　しかし、違うんだね〜、びっくりしたくらいだ。時は１５８８年、 わかりますよね。関ヶ原の決戦のずっと前ですよ。その時代にヨー ロッパでは、大砲を積んだ船で海戦が始まっていた。一番大きい誤 解は「無敵艦隊」。実は、イングランドと戦うために無敵艦隊は編 成されたのだという。

　そして、スペイン側はまだ櫂船があったのに対し、イングランド 側はほとんどが帆船だった。だから、船にしてもちょうど移行期に あって、スペインとしても地中海を離れた海戦の経験がなかったの だという。それがいきなり、ドーバー海峡に打って出るわけです。

　そしてスペインは短距離、重重量の砲弾、イングランドは長距離 砲で軽量弾だったそうだ。そしてスペインは豊富な弾薬量で、イン グランドは不足していた。つまりすべてが転換期にあって、イング ランドの戦法が結果的にうまく行ったけど、どちらが勝ったのか最 初はわからなかったのだという。

　ということは、わが国の歴史だって、400年〜500年もさかのぼれ ば実は良く分からないてなもんだろうと思う。無敵艦隊の海戦にし てそうなんだから。

蝦夷地別件（上）
船戸与一
新潮文庫

　この小説は再読だ。池澤夏樹の傑作にして最大の代表作だと思う。 すぐに読了できる、再読のこの小説を読むのに時間がかかったのは 多忙だったことが大きいのだが、実は内容を味わって読んだためだ ろうと思う。

　淡路島の蜂須賀家陪臣の稲田家の家臣の長男である宗方三郎が、 藩主とともに静内に移住し、そして静内を切り開き、一人アイヌと ともに暮らしアイヌの生活を支え、そして野望が破れて倒れたのは なぜなのか。それがこの小説のテーマであるのだろう。

　この小説の主人公三郎と史郎はモデルがいる。池澤夏樹の先祖で、 その先祖は淡路島から日高に移住した。そして史郎の娘、由良が父、 史郎の昔話を毎晩聞き記録を残すことになる。史郎たちは三郎が亡 くなってから札幌に住むが、史郎の次女の由良は結婚して帯広に住 んだ。昭和12年時点で、史郎の娘由良は帯広で夫に聞いてもらいな がら、叔父三郎の記録を書いている。この時点で、由良は35歳程度 だろうから僕の母親より20歳以上年上になる。だから、僕の祖父の 年代になるのだろう。

　小説の中で、三郎はアイヌのシトナに牧場に向いた土地まで案内 させた。三郎は50町歩申請しようという。川に沿って1km、それか ら川から直角に500mだ。シトナが、和人がここから「ここまで自分 の土地だ」というとそれが自分のものになるのか、誰が決めたのだ という。三郎は答えることができない。

静かなる大地
池澤夏樹
新潮文庫

　この小説は再読だ。池澤夏樹の傑作にして最大の代表作だと思う。 すぐに読了できる、再読のこの小説を読むのに時間がかかったのは 多忙だったことが大きいのだが、実は内容を味わって読んだためだ ろうと思う。

　淡路島の蜂須賀家陪臣の稲田家の家臣の長男である宗方三郎が、 藩主とともに静内に移住し、そして静内を切り開き、一人アイヌと ともに暮らしアイヌの生活を支え、そして野望が破れて倒れたのは なぜなのか。それがこの小説のテーマであるのだろう。

　この小説の主人公三郎と史郎はモデルがいる。池澤夏樹の先祖で、 その先祖は淡路島から日高に移住した。そして史郎の娘、由良が父、 史郎の昔話を毎晩聞き記録を残すことになる。史郎たちは三郎が亡 くなってから札幌に住むが、史郎の次女の由良は結婚して帯広に住 んだ。昭和12年時点で、史郎の娘由良は帯広で夫に聞いてもらいな がら、叔父三郎の記録を書いている。この時点で、由良は35歳程度 だろうから僕の母親より20歳以上年上になる。だから、僕の祖父の 年代になるのだろう。

　小説の中で、三郎はアイヌのシトナに牧場に向いた土地まで案内 させた。三郎は50町歩申請しようという。川に沿って1km、それか ら川から直角に500mだ。シトナが、和人がここから「ここまで自分 の土地だ」というとそれが自分のものになるのか、誰が決めたのだ という。三郎は答えることができない。

　三郎は現業学校で成績が良く、評判を聞いた周囲の人々がちょう どアイヌに会いに来ていた旅行家のイザベラ・バードと会うことに なった。二人は二人でアイヌについて深い会話を英語で交わしたそ うだ。イザベラ・バードはアイヌ民族について正確に語った旅行家 だ。三郎は苦労して、アイヌと一緒に開墾を始める。始めた次の年 に北海道をおそったバッタの被害に遭う。宗方牧場もそれは避けら れなかった。飢えるおそれの強いアイヌを守るために、三郎はジャ ガイモを与えることを決めた。これは和人よりアイヌを優先する道 だった。

　ここに三郎の思想がわかるであろう。人の間に壁はないのだ。三 郎は、それは「同情でもないし、憐憫でもない。強いていうと、そ うするべきだと思うからなのだ」と述べる。人の世においては、自 分を捨てて殺してまでも差別されるもの、虐げられているものの側 にたち、そして必ず倒される大塩平八郎のような勇敢な先駆者がい る。初期において彼らは必ず倒されのだし、彼らもまたそれは理解 している。しかし、それでも彼らは起きて戦うのだ。生まれてくる のが50年以上早かったのだろう。これに対して僕にはなにができる のだろうと考えさせ、彼らの生き方に感動するのだ。この本は、そ ういう感動を与えてくれる本だ。




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